大型化か最適化か?今後10年間の新たな風力タービン市場の展望を読み解く
中国OEMが世界の風力発電市場の3分の2を占めようとする中、欧米OEMは中核市場に撤退
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Endri Lico
Principal Analyst, Global Wind Supply Chain and Technology

Endri Lico
Principal Analyst, Global Wind Supply Chain and Technology
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ウッドマッケンジーの最新レポート、「世界の風力タービン」で、世界の風力産業の抜本的変化が明らかになりました。本レポートによると、中国OEMは国内需要の恩恵を受けながら、国際的な機会獲得を積極的に追求し、2025~2034年に世界の風力発電の設備容量のに達する見込みです。一方、欧米諸国のタービンOEMは、確立された関係性や、エネルギー安全保障への懸念、保護主義的な政策を背景に、成熟した市場で地盤を固めると考えられます。
2025~2034年の間に、風力タービンOEMの上位10社が世界のグリッド接続の98%を占めると予測され、その世界上位5社のうちの4社が中国企業となる見込みです。
中国OEM、欧米競合の中核市場への撤退を活用
中国OEMは、力強い国内成長、積極的な世界進出戦略、コスト優位性(欧米の競合他社と比較して最大32%低)を活用し、非常に大きな市場シェアを獲得しています。世界トップ企業は中国企業のゴールドウィンドとエンビジョンになると予測され、それぞれが今後10年間で200GW以上の設備を設置予定です。そして、同じく中国企業のミンヤンとウィンディが5位内に入るとされています。
中国OEMは、2025~2034年までに中国国外に設置される風力発電の設備容量の27%を獲得すると予測されており、200GW以上を海外に展開する見込みです。展開先としては、一帯一路構想に賛同する国々の新興市場に焦点が当てられています。
中国OEMが優位性を得ている要因は、大規模な国内市場、低い製造コスト、電力システムの統合に関する専門知識、欧米OEMの量より価値を重視する「Value over Volume」戦略です。これらが中国企業に国際市場への進出機会を与える要因となりました。
欧米OEMは市場シェアと商圏を喪失しつつも成長
主要な欧米OEMは全体的な市場シェアを失いつつも、自国の中核市場で成長軌道を維持すると予測されています。欧米最大のOEM、べスタスは世界トップ3の地位を維持し、その強力な実績と地理的多角化を活用して、今後10年間で5%のCAGR(複合年間成長率)を達成すると見込まれています。
シーメンス・ガメサとノルデックスのCAGRはそれぞれ、11%と5%の伸びを示すと予測されています。欧米のOEMは欧州および北米で95%強の市場シェアを占め、世界の他の地域が中国OEMに移行しているものの、継続的成長を実現し、自国の商圏では市場の支配的地位を維持しています。
洋上風力発電市場の動向
洋上風力発電セグメントでは固有の競争力学が働いており、シーメンス・ガメサとベスタスが中国国外の世界市場の92%を占めています。しかし、中国OEMの進出は著しく、ミンヤンは中国国内の洋上風力発電分野におけるトップの座を利用して、欧米OEMが慎重な姿勢を崩していない浮体式洋上風力発電など、国際的な拡大の機会を狙っています。
世界の洋上タービン需要は2025~2034年で84%増加すると見込まれ、タービンの大型化が進んでも、基数ベースでの需要は倍増すると予測されています。この成長軌道は、定評のある欧米の大手洋上風力発電企業にとって好機となると考えられます。一方で、国際市場進出を目指す中国の新興競合企業にとっても同様に好機であり、中国OEMが実績ある自国の技術を世界に向けて既に展開していることからも、有力であると考えられます。
欧米OEMと中国OEM間の技術格差が加速
欧米OEMと中国OEMの戦略的アプローチで、技術的に大きな相違が生じています。中国OEMは積極的にタービンのサイズを拡大しており、ローター径220メートル超の陸上風力タービンが、今後10年間で中国のグリッド接続の81%を占めると予想されています。洋上セグメントでは、中国製タービンの50%が容量20MWを超えるとされています。
一方で、欧米OEMは急速なサイズ拡大を追求するよりも、既存のプラットフォームからのリターンを最適化することを優先しています。この戦略の違いは、欧米OEMが規模や容量よりも質や価値を重視している一方で、中国OEMは積極的な容量拡大と大型タービンプラットフォームによる技術進歩を重視していることの表われです。
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